加齢黄斑変性

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北海道懇話会講演
加齢黄斑変性−最近のトピック

   大塚眼科病院 引地 泰一先生

     

司会者:今日は大塚眼科病院の引地泰一先生に加齢黄斑変性のお話をしていただきます。引地先生は、大塚眼科に着任する前は旭川医科大学の助教授で、黄斑変性の権威として知られています。よろしくお願い申し上げます。

 

引地先生:この北海道の会が発足したのが昭和61年ということでしたが、私が旭川医大を卒業したのが62年ですので、それより1年前にはすでに活動していたということですね。個人的には医者になって随分たったなと思うことの多い昨今ですので、私より先輩のこの会にお招きいただきありがたく思っています。 

 それでは本題に入ります。実は今から3年前、大塚眼科に移りました年に、この会で加齢黄斑変性の話をさせていただいております。このときは加齢黄斑変性に対して「光線力学的療法(PDT)」が厚生省で認可された年でもありましたので、これから大塚眼科でこういう治療を始めますということで紹介させていただきました。 

 今回は、この病気と光線力学的療法についての復習と、この治療を始めて3年たちましたので、その治療成績、新たに発見された治験についてのお話、最後にこの病気の今後についてお話しようと思っています。 

 これは眼球の断面図ですが、これからのお話で一番関係あるのは眼球の奥の壁を作っている部分で、この壁は大きく分けて三つの層になっています。一番外側がいわゆる白目の部分で、「強膜」と呼んでいます。一番内側にあるのが「網膜」で光を感じる神経の膜です。そして網膜と強膜の間に「脈絡膜」という血管が豊富な膜があります。

黄斑とは】

 これは眼底写真で、網膜の中心部分を撮影しています。網膜の中心部分がこれからお話する黄斑変性の主役である「黄斑」部です。さらにこの中心に当たる点の部分を中心窩と呼んでいます。ここは少し凹んでいるのでこのような名前がついたのでしょう。ここから少し離れたところにある輪のようにみえるのは視神経乳頭といいます。また赤い線のように写っているのは網膜の栄養を担当している血管です。 

 加齢黄斑変性は、網膜と脈絡膜の境目の部分で起こるので、この部分をもう少し詳しくみてみましょう。

 ここには「視細胞」という光を感じる主役の細胞が一列に並んでいます。さらにその外側には網膜の「色素上皮細胞」があります。この二つの細胞は深い関係をもっていて、色素上皮細胞の機能の低下が、視細胞の機能低下とつながっています。もう一つ、網膜と脈絡膜の境目に「ブルフ膜」があります。これらの言葉はこれからのお話に多く登場してきます。

加齢黄斑変性の定義】

 次に病気の話にうつりましょう。
加齢黄斑変性を定義すると「高齢者の黄斑におこる網膜の色素上皮細胞、ブルフ膜、脈絡膜の加齢変化を基盤とする疾患」ということになります。あくまでも年齢的な変化がもとになっておこるということです。 

 この加齢変化は、網膜と脈絡膜の境目におこります。網膜の色素上皮細胞を一つだけ取り出してみますと、この白い部分は色素上皮細胞ではなくて視細胞の外節と呼ばれる部分で、このように色素上皮細胞にもぐり込んでいます。この外節は視細胞の代謝に大きく関与していて、古くなった視細胞はここを通って色素上皮細胞に取り込まれていきます。 

 そこで老廃物として処理されるのですが、処理されて残ったゴミは、色素上皮細胞の中に溜まっていきます。これをリボフスチンと呼びますが、年齢を重ねるにつれて溜まったリボフスチンは増えてきて、さらに色素上皮の外側にあるブルフ膜や脈絡膜にも溜まるようになります。これらは加齢性の変化と考えられています。色素上皮細胞の老化が最終的に視細胞の働きの低下に結びついていろいろな症状がでてきます。 

 加齢黄斑変性は、初期と後期に分けて考えられていて、初期を加齢性黄斑症(ARM)、後期を加齢黄斑変性(AMD)と呼んでいます。初期と比べて、後期の病変は視機能に大きな影響を与えます。これは初期の加齢性黄斑症の眼底写真ですが、正常な眼底に比べて、黄色いプツプツとした模様が目立ちます。このプツプツが色素上皮細胞と脈絡膜の間に溜まった老廃物で、ドルーゼンと呼ばれています。ドルーゼンには、次のこの写真のように先ほどの写真と比べて境界が不鮮明な柔らかい感じがするものがありますが、この方が病期としては進行していて後期に近いといえます。 

 進行した後期の加齢黄斑変性は、萎縮性と滲出性の二つのタイプに分かれます。

 萎縮性黄斑変性の特徴は、色素上皮細胞が広い範囲で障害されていることです。もう一つの滲出性黄斑変性は、色素上皮の上や下に脈絡膜から新生血管がでてきます。この血管は出血しやすく、出血した血液の成分は網膜の方にしみていって網膜にむくみを生じます。ですから脈絡膜の新生血管があるかないかで、この二つのタイプの区別をします。

浸出性の方がこわい

 加齢黄斑変性という名前の通り、年齢と共に患者数が増えることは統計的にも表れています。軽症のARMであれば70歳台では15%、80歳を過ぎると二人に一人は、このような所見を持っているといわれています。ただ、ARMの段階では、視力障害はあまりありません。あってもごく軽度の視力低下、たとえば矯正視力が0.8ということで、自覚されないことも多いと思います。 

 一方、重症のタイプ:AMDになりますと、60歳以降の0.8%弱がAMDといわれています。滲出性のものは著しい視力低下を生じます。しかも進行します。ものを見ようとすると真ん中の部分が暗くって見えないという「中心暗点」とか、ものが歪んで見える「変視症」もおきます。この中心暗点や変視症は、加齢黄斑変性に限らず、黄斑部が障害されるとおこる症状でもあります。 

 AMDのなかでも萎縮性の方は、滲出性より進行は遅くて視力の障害が軽度です。したがって、現在世界中で加齢黄斑変性の治療に一生懸命取り組んでいますが、特に重症の滲出性のものを対象にしています。これからお話することは、特に断りがない限り、滲出性のものと思ってお聞きください。

【治療について】

 これは欧米人のデータですが、加齢黄斑変性で5年間無治療だった人の視力を調べたものです。

 最終的には5年前と比べて5年後の視力は7〜8段階低下していました。日本人の場合は、ここまで急速に悪くはならないという印象をもっていますが、滲出性の加齢黄斑変性の自然経過はきわめて悪いということです。別の調査でも5年後の視力は90%近くの人では0.1以下の視力という結果がでています。 

 そこで治療の話になります。萎縮性の加齢黄斑変性は今のところ有効な治療法は見つかっていませんが、幸いなことに症状も自然経過もマイルドです。

 滲出性については、今までに治療効果が証明された治療法が二つあります。一つは従来からあるレーザーによる光凝固、もう一つは日本では3年前から始まった光線力学的療法(PDT)です。どちらも目的は脈絡膜の新生血管の活動を止めさせようとする治療法です。 

 その結果として、視力低下を押さえようとするもので、直接視力を上げるという治療ではありません。脈絡膜の新生血管を閉塞させるために、光凝固が有効であるということは10年前に証明されています。アメリカでは日本より積極的にこの治療が行われました。角膜側からレーザーを照射して、水晶体、硝子体、網膜を通してその下にある脈絡膜の新生血管をつぶそうとするものです。その結果、うまくいくと新生血管は消失しますが、同時にレーザーが通った網膜なども傷んでしまいます。 

 網膜は光を感じる大切な膜ですから、レーザーがあたった分、網膜も障害されてその部分の視力は低下します。もし網膜の中心部分をレーザーで照射すると、視力は真ん中の部分が見えなくなってしまいます。それでも何もしないよりは5年後の経過は良いということで、アメリカでは中心窩のレーザーも行われました。何もしないよりは良いといってもレーザi直後から真ん中が見えなくなってしまうこの治療法以外に、何か良い方法がないだろうかということで、光線力学的療法(PDT)が考えられました。

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